床ずれ問答(褥瘡に対する「湿潤」の解釈とラップ療法の変遷)

 小浦場先生のポスター発表「褥瘡の病理組織から考える創傷治癒の病態とラップ療法・開放療法の意義」においてはその効果の機序に関し、かなり突っ込んだ発表が行われていたので記事にさせて頂きます。

結論を私なりにまとめると、慢性潰瘍の肉芽組織では創表面に血管新生が生じ、最表面には血管透過性の高い新生血管が存在で、滲出液の起源と考えられるが、肉芽表面にはリンパ管が存在せず、滲出液は表面から排出されざるを得ない。よってwet dressinngは必要ない。すなわち、ラップでなくオムツが最も条件を満たすというご発表であった。私なりに質問をさせて頂いた。
久保「先生のお話は、私には難しすぎたのですが、一言でラップ療法が否定されたような驚きです。それならば、今までラップで十分な効果を挙げた理由は何でしょうか。」
小浦場先生「決してラップを否定したわけではなく、今までラップでもよくドレナージでき、その上に当てられていたオムツが良かったのだと思います。なぜなら、吸収した滲出液の逆戻りがなく、(細菌の繁殖しやすい)粘液を吸収するためです。」
久保「しかし、穴があいたり、脇からドレナージできたとしても、部分的には密着密閉しておりますので、滲出液は押し戻されると思いますし、押し戻されることにより良く洗われて良いのだと、考えておりました。」
小浦場先生「(穴をあけず)四隅をテープで止めて完全に密閉した場合に、多くの悪化例が出たわけでしょう。部分的に考えるのではなく、創全体としてドレナージができる環境を作ることが大事です。」
総括:現場の立場の人間として総括すれば、決して湿潤環境や滲出液で洗うということ自体が悪いのではなく、褥瘡という特殊な病理組織学的状況で、過剰な湿潤環境に持っていくことは逆効果であると結論付けることができる。


褥瘡に関わるべき薬剤師

 床ずれ対談 
テーマ:薬剤師はもっと褥瘡へ関わるべき
国立長寿医療センター副薬剤部長、日本褥瘡学会評議員・褥瘡局所治療ガイドライン外用薬担当委員、古田勝経先生との対談

久保「薬剤師が褥瘡(床ずれ)に本格的に介入することは、まだ異端視されるようですが、いかがですか。」
古田先生「確かに、そうです。がん治療や緩和ケアには、かなり参加するようになりましたが、褥瘡のケアはそれらと不可分なのに、なぜか偏見の目で見られてしまうのが不思議です。」
久保「がんの末期に褥瘡が非常にできやすいことや、DMの潰瘍の方が床ずれ以上に潜在的に多いことを考えれば、創傷に対する洞察を深める薬剤師が増えなくては、病院薬局薬剤師を問わず活躍する場がより狭められると思います。」
古田先生「理解されない中、さきがけ取り組んでまいりましたが、今の褥瘡治療そのものが、混迷を極める中、薬剤師が具体的に薬の選択に助言できるほど、薬剤と創傷について勉強し、特に在宅においても重要視されなくてはなりません。褥瘡こそ薬剤師の職能が生かされる分野であり、そうすれば保存療法だけによってもほとんどが治癒されると思います。なぜなら、最近栄養栄養と騒がれておりますが、保存療法をきちんと行わない結果、栄養が足らないことが過剰に問題視され、栄養強化で保存療法の中身とは関係なく褥瘡が良くなると考えられてしまっていますが、実際には低栄養状態でも褥瘡は十分治ります。薬剤師が議論の場に出てこないで栄養士さんの意見が相対的に強くなってしまい、食品メーカーの利害も絡んで不適切な方向にも行きかねません。」
久保「そう思います。先生も、傷の湿潤度の測定や、薬剤のブレンドによる工夫など、オーダーメードに近いことをされておりますが、それは医療に介入するほど既存のものだけでは問題があると考えた結果であろうかと思います。私も病院薬剤師会が賛成しない院内製剤により剤型を改良しましたが、医師や医療現場の実情に応えた結果に過ぎません。ただ、それにより現場のモチベーションが上がり、褥瘡処置にかかる時間が短縮できれば、看護師さんはもっとやらなければならない業務に時間を費やすことができ、職場のレベルアップを薬剤師が支援できることになります。」
古田先生「残念ながら薬剤師は受身の方が多く、自分から出ていこうとする方が少ないようで、勿体ない話です。しかし、私の講演で、薬剤師の関与とその実績を話すと、薬剤師にこんな貢献ができるのかということを初めて知ったと、多くの人から言われました。」
久保「現場を知れば知るほど褥瘡や創傷治癒の困難さを感じ、それを超えたところに、良さがあると思いますが、どんな保存療法でも100%のものはなく、中にはうまくいかないケースをも分析して情報を公開することこそ必要に思います。学会発表の多くは症例発表なのですが、うまくいった事例はわかりますが、その方法で悪化した事例はないのか?と聞くと、大抵無いと答えます。でも本当に客観的な情報としてはすべて公表してほしいと思います。」
古田先生「中には、使い方そのものを間違って悪化させる場合もあると思いますが、褥瘡を恥と思うのではなく、情報を共有することが、褥瘡治療の発展につながると思います。」
久保「ありがとうございました。」


特に在宅患者さんのニーズに応えるために

 床ずれ対談 テーマ:特に在宅患者さんのニーズに応えるために
高岡駅南クリニック
塚田邦夫院長(日本褥瘡学会評議員 東京医科歯科大学腫瘍外科非常勤講師)との対談

久保「先生は在宅創傷治癒推進センターなどを通して、在宅における褥瘡(床ずれ)治療や予防法についての確立を目指しておられることを存じ上げておりますが、今ある最大の問題点は何かと思いますか。」
塚田「そもそも在宅の活動は、上の立場の者が例えば講演会を催したりするばかりではなく、実は現場から上がったノウハウや情報を、それぞれのメンバーがそれぞれの地域や責任分野の中からしっかりと持ち寄って、十分吟味し、取捨選択しながらより良くなっていく活動が必要と思われます。」
久保「そうであれば、例えば褥瘡学会の分科会と現場からの意見がかみ合うようなシステム作りが必要と思われますが、具体的な擦り合わせの方策が大変と思われます。」
塚田「大事なのは、多くの現場の情報をいかに手に入れるかということです。」
久保「われわれは現場の貴重なシーズを掘り出し、より良いものを広げようと考えております。例えば、定番イソジンシュガーの新剤型や被覆材、介護用クッション、栄養のコラーゲン投与などを研究中です。」
塚田「そのような意味では床ずれ研究会のユニークな活動と研究をどんどん発表する機会があればよいと思いますね。」
久保「病院施設においても同じことですが、特に在宅の栄養管理においてはコストが高いことがネックになると思います。例えば亜鉛やアルギニン酸入りの栄養補助ドリンクなどは、良いものであっても長期間摂取し続けることは患者さんにとって負担がきついことになります。」
塚田「そのとおりで勧めても1回買って終わってしまうことが多いので、本当の評価はしにくいのが現状です。」
久保「ですからいかに安いコストでしかも患者さんにとって安全な方法を見出す必要が現場の側に必要と思います。」
塚田「製品化するとなると企業が関わることは必然でしょうが、研究の段階において例えばNPOなどが行うことによって、大幅なコストダウンが図られ、ひいては社会的貢献度の高い商品を生み出すことができると思います。」
久保「ありがとうございました。」


糖尿病性潰瘍について

 床ずれ対談(テーマ:糖尿病性潰瘍について)
神戸大学医学部形成外科准教授
寺師浩人先生
「歩行できる感覚障害の足部潰瘍(褥瘡)をどう治療するか」の講演(近畿地方会)において

解説:寺師先生は、今まで漠然と当たり前と思っていた糖尿病患者の足部潰瘍の難治性の理由について、血液の循環不全のみならず実際血糖値が上がることにより表皮角化細胞の増殖が止まり、自律神経の障害により汗腺が閉塞しドライな環境になることがより治療を困難にしていることを噛み砕いて説明された。ところが、アジア人はもともとインシュリンの出にくい体質で生活の欧米化に伴い糖尿病性足部潰瘍は急増するにもかかわらず、日本で看護師を含めた多科チーム医療が進んでない状況の中で、今後の課題や予防についても話された。
そこで質問させていただいた内容
久保「専門医のいない環境、療養型病院や施設、在宅などでも、褥瘡以上に多くの方が特に糖尿病性足部潰瘍になっていることを知っております。しかし、多くは金銭的にも負担のある手術を望まなかったりして深刻にとらえることなく、切断となるケースもあります。何とかお力をお借りしたいと思いますが、写真などでも判断できるでしょうか。」
寺師先生「それだけでは無理です。実際の傷を見て触って、背後の疾患や個人的特徴、そして、血管の造影や組織をCTで見るなどしない限り診断は下せません。」
久保「やはりそうでしょうか。それでも現場では、保存療法だけでやってみるしかなく、時には自然に指が落ちてしまうケースがあり、この場合は回復します。」
寺師先生「今のようなAutoAmputation(自然切断)はたまたま組織の再生分化がうまくいった結果ですが、(背後にある糖尿病という疾患について)スタッフの意識を高め、早めに患者さんやご家族に納得していただくしかないと思います。」
久保「ありがとございました。」


ラップ療法の臨床例での検討

 概要「穴あきポリエチレンラップの治療成績、床ずれの過剰肉芽へのステロイドの有効性、ラップ療法の熱傷への使用の注意点について」

対談相手の先生:
揖斐厚生病院皮膚科部長、医長、皮膚科関係、特に白癬に関する著作多数
藤広満智子先生(NPO法人床ずれ研究会相談役)

場所:岐阜県揖斐町揖斐厚生病院、平成19年2月下旬

続きを読む >>

| 1/1PAGES |

calendar

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< July 2019 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

  • Mohsペーストのより安全な使用方法について情報を提供いたします
    才津 恵 (04/08)
  • Mohsペーストのより安全な使用方法について情報を提供いたします
    高橋みえこ (01/24)
  • Mohsペーストのより安全な使用方法について情報を提供いたします
    山田 恵子 (01/07)

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM